第2回人権啓発基礎講座 2019年5月28日実施

講演テーマ 『企業活動と人権』 ~企業の人権取組みと人権啓発推進担当者の役割~

講   師 大阪企業人権協議会サポートセンター サポートセンター長 芝本正明さん

【講座概要】

1.企業はなぜ人権(問題)に取組むのか

 〇私たちの仕事と人権

 〇企業の人権取組みの原点「同和問題(部落差別における就職差別)」

 〇企業の社会的責任(CSR)としての人権取組み

2.人権問題の基本を理解する

〇人権とは

〇法と人権

・日本国憲法と基本的人権の尊重

・国際社会の人権と日本

・日本社会の人権課題

・人権を巡る法整備の進展(差別解消三法)

〇人権問題の基礎的理解

・ステレオタイプ、偏見、差別の理解  等

3.企業活動に関わる多様な人権問題の理解

 〇企業活動で理解しておくべき人権課題

・偏見・差別に係る問題(同和問題、障がい者、高齢者、外国人、LGBT など)

  ・職場における人権問題(ハラスメント問題)

  ・その他の人権問題(個人情報)

4.企業の人権啓発の意義と課題

5.人権啓発推進担当者に期待される役割

【講座要旨】

■企業はなぜ人権に取組むのか

人権を大切にしない事業活動は、お客様や社会の信用・信頼(ブランド)を失うことにつながるからと言っていいでしょう。

わが国でも、あらゆる業種において、人権をないがしろにした不祥事が発覚しています。これらの企業は、信用・信頼を失い、回復するには大変な労力と時間がかかり、多くの人たちが犠牲になりました。

従って、企業が人権に取組むことは、企業の社会的責任(CSR)でもあるわけです。

■人権の基本を理解する

そもそも人権とは、「全ての人が人間らしく幸せに生きるための権利」であり、日本国憲法においても基本的人権として明確にうたわれています。

日本政府が解決に向けて取組みを進めている人権課題として、平成29年版人権教育・啓発白書には、「女性、子ども、高齢者、障がい者、同和問題、外国人、HIV感染者・ハンセン病患者等、アイヌの人々、ホームレス、刑を終えて出所した人、犯罪被害者とその家族、インターネットによる人権侵害、北朝鮮当局による人権侵害、性的指向/性自認を理由とする偏見・差別、東日本大震災に起因する偏見・差別、人身取引をなくす」と記されています。最近では、これらの人権課題に加えて「職場のハラスメント」も重要な取組み課題になっています。

また、かつては、社会的に差別・人権上の問題にならなかった事柄も、時を経て人権水準が変化(高くなって)する中で差別的であると問題になったり、言葉・表現においても、時代により差別性・人権侵害性は顕著に変化しています。差別に対する立場として、「差別に無関心な人」「差別に傍観者の立場をとる人」も結果として差別に加担していることになります。

■企業活動にかかわる多様な人権問題

企業は、長年にわたって、同和問題についての社内啓発・研修に取組んできました。しかし、これら同和地区住民に係わる偏見や差別問題は、企業活動のさまざまな領域において依然発生しています。「従業員の偏見・差別意識による言動」「企業の事業運営そのものに関連した差別問題」「採用選考にかかわる差別事件、不適切事象」などなどです。その他、「障がい者の人権」「外国人の人権(レイシャルハラスメント)」「高齢者の人権(パターナリズム:自己決定権を奪う)」「職場のハラスメント問題」「LGBT(性的マイノリティ)に対する人権」「個人情報・プライバシー」などの対応も強く企業に求められています。

■企業の人権啓発の意義と課題

社会に及ぼす影響に対する自社の責任として、CSRを実践することは“必須”であり、実践しなければ社会から非難されます。また、企業の社会的責任(CSR)は、経営品質の一部であり、その国際基準は企業の評価基準の一つといわれています。従って、「人権」は、CSRの中核課題であり、企業自身が主体的価値観を見出して積極的に取組むことが重要となります。

人権研修は、企業の社会的責任としての人権を、企業の行動として実現するための、企業内で取組みを進める“手段の一つ“という認識が大切です。

■人権啓発担当者に期待される役割

企業において、人権の社会的責任(CSR)を推進するには、人権課題が複雑・多様化する現代社会において、人権問題を正しく理解し、人権知識・感性を持つ人権啓発担当者が、その中核的役割を果たすことが重要です。そして、社内に「人権の世間」を作るためにも、人権啓発担当者が果たす役割は重要です。

また、人権啓発担当者として習得した人権知識・感性をもとに、公正採用選考はもとより、自社の事業活動全般における人権問題の未然防止に努めることが重要となります。

大阪企業人権協議会 サポートセンター長
            芝本 正明さん

第2回人権啓発基礎講座資料

【人権啓発DVD視聴】

 「わからないから、確かめ合う」-コミュニケーション- 企画・制作 東映(株)

DVDの<ねらい>

 昨今、長時間労働による過労死、セクハラやパワハラなどのハラスメント、不当な差別など、企業が関わる様々な「人権問題」がメディア等で大きく取り上げられます。こうした人権問題への対応は、時として、企業の価値に大きく関わります。そのため、企業の社会的責任(CSR)や社会的責任投資(SRI)に対する関心の高まりと相まって、人権尊重の考え方を積極的に企業方針に取り入れたり、職場内で人権に関する研修を行う企業も増えてきています。

「わからないから、確かめ合う」では、ハラスメントや差別的取扱いなど、多くの日本企業が直面する可能性が高いテーマを中心に取り上げ、それらに共通する解決策として、「コミュニケーション」を提示しています。相手に伝わらない場合、コミュニケーションの見直しを行いましょう。相手への配慮がお互いストレスがたまらず、良好な関係に繋がります。

誰もが暮らしやすい社会を目指して、一歩踏み出しましょう。

あいうえお