「経営層人権啓発講座」講演内容

お陰様で、283名のご参加をいただきました。

大阪市委託事業「経営層人権啓発講座」を9月18日(金)大阪市立中央公会堂で開催いたしました。新型コロナウイルス感染症拡大防止のために、参加者340名を定員として開催いしましたところ283名にご参加いただきました。

ご講演いただきました講師の方々の講演資料を閲覧いただけるようにします。

講演Ⅰ:(80分)

講 師 近畿大学 人権問題研究所 主任教授 北口 末広先生

テーマ 「新型コロナウィルス感染症問題と人権ー企業経営とIT革命の進化をふまえてー」

北口 末広先生

講演概要

 新型コロナウイルス感染問題に関する情報が公式・非公式を問わず膨大な量に上っている。こうした情報の中にはフェイク情報も数多く含まれており、多くの人びとはそれらの情報に翻弄されている。日常生活や社会・経済にも多大な影響を与えている。情報の不正確さや人びとの不安は、流言やうわさ、フェイク(虚偽)等を容易に信じさせ拡散させてしまう。現在は情報環境の大きな変化によって、ファクト(事実)情報もフェイク情報も瞬時に拡散されていく。とりわけフェイク情報はファクト情報に比較してスピードで20倍、拡散力で100倍である。

 以上の傾向がIT革命の進化とともにより顕著になった。人びとは簡単に誘導され、デジタル情報によって、脳が分析されて乗っ取られる「ブレインハッキング」という現象まで生起するようになった。こうした傾向が新型コロナウイルス感染症に関わるフェイク情報の拡散に大きな影響を与えている。

 人びとは不安な状態に置かれ、自身では解決できない事態に遭遇した場合、その不安から逃れるために間違った情報でも、その情報を信じて行動するようになることがある。端的に指摘するとフェイク情報であっても、容易に信じるような社会的状況になるということである。こうした状況は差別や人権にも大きな影を落とす。それらの具体的事例を紹介しながら情報リテラシーの要点や重要性についても解説し、新型コロナウイルス感染症問題が企業経営をはじめとする経済や社会に与える影響について論じていただきます。

講演Ⅱ:(80分)

講 師 IGES(公益財団法人 地球環境戦略研究機関)理事長 武内 和彦先生

テーマ 「ポストコロナ時代の気候変動対策と人権~パリ協定の実施に向けた中小企業の貢献~」

武内 和彦先生

講演概要

 世界規模での新型コロナウイルスの感染拡大の背景には、人間活動が野生生物の領域に近づきすぎたという人間・自然関係の問題と、急速に進むグローバル化の負の側面が指摘されている。気候変動問題によるリスクも同様の構造のもとで深刻化しており、社会的に弱い立場にいる人により大きな影響が及ぶことも共通している。

 2016年のパリ協定の発効を受けて、世界の気候変動対策への機運は高まったが、その取り組みは残念ながら不十分である。このまま気候変動の影響が深刻化すると、あらゆる人々の暮らしが脅かされることは明らかである。これからの10年が鍵と言われる中、気候変動の影響を抑え、レジリエントで包摂的な持続可能な社会を実現するには、中小企業の取り組みが不可欠である。そのことはまた、中小企業自身の持続可能性にもつながると考えられる。

 本講演では、ポストコロナにおける創造的復興(Building Back Better)と協調的前進(Moving Forward Together)の視点と先駆的事例の取り組みも踏まえ、企業経営層の皆さんとともに、気候変動対策と人権の保護・尊重を前進させていくための方策について考えてみたいと思います。